かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『夢遊病者と消えた霊能者の奇妙な事件』

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上下巻合わせるとこうなる装丁も素敵!


舞台は心霊ブームに沸くヴィクトリア朝時代の英国。
ひとりの女性がロンドン行きの寝台列車に飛び乗るところから物語は始まる。

彼女の名はミス・レーン。
心霊現象研究協会の依頼で幽霊屋敷を調査中
相棒で親友だと思ってきたミス・フォックスの不正を見つけてしまう。

黙っていれば自分も不正の片棒を担ぐことになる。
だが公の場で相手を公然と非難するのは……。
急ぎ決断を迫れらた彼女は熟考する間もなく、
列車に飛び乗って現場を立ち去ったのだった。

けれども、乗車賃を払うと手元に残ったお金はごくわずか、
今や仕事も住まいも失った彼女には行く当てがなかった。
そんなとき一枚の求人広告が目に留まる。

「求む、審問探偵の助手。」

報酬は歩合制、
給料は払えないが三食、住居付きという条件で
かけだしの探偵ジャスパー・ジェスパーソンの助手になる。

このジェスパー、一見少年のような風貌だが
博識な上、東洋武術で鍛えた俊敏な身のこなしで、
いつだって自信満々。

かたやミス・レーンは物事を冷静に見極める鋭い観察眼の持ち主で、
行動力もある。

二人は精力的に働くが、
報酬も名声も思うほどには上がらなかった。

そんなとき、舞い込んだのは、
とある紳士の夢遊病にまつわる案件と
霊能力者の連続失踪事件。

とりわけ霊能力者たちの失踪事件は
ミス・レーンにとって、
かつての仕事やそれにまつわる人間関係の中に
再び足を踏み入れざるを得ない案件だった。


いやいやこれは面白かった。

なんといってもミス・レーンが
信頼していた相手のインチキを目の当たりにして
心霊研究に幻滅しているという設定が効いていて
次々現れる霊能力者たちを
ついついうさんくさく思ってしまう読者の気持ちが浮かないのがいい。

やりくり上手で包容力があるというステレオタイプの母親像に止まらず
ミス・レーン相手に東洋武術の手ほどきまでしてくれる
ミセス・ジェスパーソンや

かなり問題がありそうな人物であるにもかかわらず、
なぜだか妙に読者を惹きつけるミス・フォックスの存在感など、
脇役のキャラ立ちも楽しい。

本人すら知らなかったミス・レーンの「秘密」も明らかになって、
早くも次作が待ち遠しい、楽しみなシリーズの登場だ。

 

夢遊病者と消えた霊能者の奇妙な事件 上 (探偵ジェスパーソン&レーン)

夢遊病者と消えた霊能者の奇妙な事件 上 (探偵ジェスパーソン&レーン)

  • 作者:リサ・タトル
  • 発売日: 2021/03/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

夢遊病者と消えた霊能者の奇妙な事件 下 (探偵ジェスパーソン&レーン)

夢遊病者と消えた霊能者の奇妙な事件 下 (探偵ジェスパーソン&レーン)

  • 作者:リサ・タトル
  • 発売日: 2021/03/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)