かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『消失の惑星【ほし】』

 

消失の惑星【ほし】

消失の惑星【ほし】

 

 8月のある午後、
ロシアの東のはずれ、
カムチャツカ半島のとある海辺で
アリオナとソフィアという名の幼い姉妹が
遊んでいるシーンから物語は始まる。

9月、13歳のオリヤは
親友のダイアナから避けられるようになる。
二人の女の子がいなくなった事件以来、
ダイアナの母親は過度に心配し、
娘の行動や交友関係を厳しく制限するようになっていた。
オリヤの家は母一人子一人、
おまけに母親は観光客相手の通訳者で年中旅に出ている。
子どもに対するしつけがあまく危険きわまりないという、
ダイアナの母親はまるで、
自分たちのように完璧な家庭ならば、
事件に巻き込まれるはずなどないと
いわんばかりの態度だった。

10月、恋人たちはキャンプをしながら、
未だ行方不明の子どもたちについてあれこれと想像をめぐらす。

11月、
これまで先住民族や母子家庭について持っているたっぷりの偏見を駆使して
未だ行方不明のこどもたちを巡る「真相」を
担当巡査長にあれこれと吹き込んできた
ヴァレンティーナ・ニコラエヴナは、
自身の完璧なはずのあれこれがほころびはじめていることを
正視できずにいた。

12月、先住民族の血をひく大学生のスーシャは
従妹に誘われて民族舞踊団に入ることに。
彼女の気持ちは
そこで知り合った青年と
故郷に残してきた白人の恋人との間で揺れ動く。

1月、未だ行方不明の幼い姉妹が
数年前に失踪した末娘をめぐる姉や母のやりきれない思いに
さらなる影を落とす。


幼い姉妹の行方は依然として不明で、
事故か誘拐かもわからぬまま時ばかりが過ぎていく。


2人を最後に目撃した研究者、
心配性の恋人に監視される大学生、
捜査に携わる警察官の妻、
かつて失踪した妹を持つ姉やその母親、
行方不明の少女たちの母親、
事件に不安を覚えた多くの女たち。


誰それのきょうだい、誰かの従姉妹、
その友人、あるいはそのパートナーと、
少しずつ関わりのある人たちが次々と登場。

登場人物の多さと次々切り替わる場面に、
読み始めた当初は、
(これ相関図作りながら読んだ方がいいかしら?)などと考えもしたが、
読み進めていくうちに
それぞれの物語をじっくり読み込めば良いのだと気づく。

登場人物それぞれに物語があって、
そのどれもが読み応えがあると同時に余白がある。
ページをめくり続けても
全体像はなかなか見えないが、
「自分の人生の中では誰もが皆主人公」なんだよな…などと考えながら、
それぞれの人生に思いをはせる時間も楽しかった。

そして迎えるクライマックス。
あの人とこの人が、あの線とこの線がつながるとは!!


新鋭米国作家が自然豊かで美しいカムチャツカを舞台に描いたのは、
かの地で懸命に生きる女たちの痛みと希望。
喪失と再生の物語だった。