かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『絶望書店: 夢をあきらめた9人が出会った物語』

 

 「絶望」といえば、この人!?などと言っていいのか悪いのか、
『絶望名人カフカの人生論』でお馴染みの頭木弘樹さんが編まれた
古今東西から「夢のあきらめ方」にまつわる物語を集めたアンソロジー”は、
エッセイあり、小説あり、ノンフィクションあり、マンガあり、歌詞ありと
とてもユニークなラインナップ。

巷には「夢をかなえる本」や「夢をあきらめない本」が溢れているけれど、
こういう本があってもいいではないかという
編者の気持ちに思わず共感。

眉間にしわをよせることなく
肩の力を抜いて安心して読み進められる大きめの活字もうれしい。

香川真澄さんが訳されたイタリア文学
ダーチャ・マライーニ著
マクベス夫人の血塗られた両手」は
くっきりと目にに浮かぶような舞台稽古シーンが印象的。

これ目当てで手にしたといってもいい
斎藤真理子さんの翻訳で
『春の宵』の著者クォン・ヨソンさんの短篇「アジの味」は
期待以上にぐっときたし、

実は初めて読んだ連城三紀彦さんの作品
「紅き唇」も面白かった。

豊福晋さんがサッカー選手を追ったノンフィクション
「肉屋の消えない憂鬱」
(『カンプノウの灯火 メッシになれなかった少年たち』より)
も忘れがたい。

絶望書店に立ち寄って
夢をあきらた人々の話をじっくり見聞きしてきたはずなのに
読み終えたあとのこのすがすがしさはいったいどこからきたのだろうか。

ふらっと立ち寄っただけなのに
なんだかちょっとくせになりそうな危険な書店だった。

         (2019年04月15日 本が好き!投稿