『矢川澄子ベスト・エッセイ 妹たちへ』を読み終えたので、いつものようにレビューを書こうと思ったのだが、あれこれと言いたいことは沢山あるのに、なんだかうまくまとめることが出来そうにない。
しかたがないので、今の時点で、思い浮かんだことを書き留めておこう。
私にとって矢川澄子と言えば、『おばけリンゴ』や『あめのひ』からはじまって
『ぞうのババール』シリーズに、
メアリー・ド・モーガンの『風の妖精たち』
そうそう、ミヒャエル・エンデも。
思えば、子どものころから、随分お世話になってきた。
『雪のひとひら』に至っては、本篇ではなく「あとがきに代えて」と副題がつけられた巻末の訳者エッセイの方を、繰り返し読んでもきた。
その才能は“本物”だと、ずっと思ってきたから、彼女は澁澤龍彦とは切り離して評価されるべきだとも思ってもいる。
70のエッセイを収録した『妹へ』を読んで、改めてその才能に感じ入るとともに、矢川にとって、澁澤との結婚生活は、幼年期の思い出同様、自らの成り立ちに欠かせない経験であったのだろうと改めて思いもした。
と同時に、それは、この本の裏表紙にあるような“澁澤龍彦の最初の夫人”などという紹介のされ方ではなく、彼女自身の人生の一部としてとらえられるべきものであるのではないかとも。
エッセイ集の構成としては、そうしたあれこれにも細かな気配りが感じられる編集であっただけに、おそらく編者ではなく、出版社の意向なのではないかと思われるこの種の打ち出しは非常に残念な気がした。
そういう気になる点はあったにしても、このアンソロジー自体はすばらしく、田舎暮らしの様子も、森茉莉とのエピソードも、ヴァージニア・ウルフの話もと、隅々までおもしろく、改めて矢川澄子に惚れ直した。