ずっと、すーと、はるか遠くの北の果てに、
一年中雪でおおわれた土地がある。
そこで暮らすのは、トロルやゴブリンやエルフや妖精たち。
中でも私のお気に入りは
『クリスマスをとりもどせ!』を読んで以来、
ずーと、気になっている真実の妖精だ。
真実の妖精は、おちこんでいた。
なぜって19人いる女のきょうだいとも、38人いる男のきょうだいとも
似ていないばかりか、
みんな彼女の言動にかんかんで、すっかり疎遠になってしまっているのだ。
それというのも、この妖精、
踊ったり歌ったり、本を読んであげたりと誰かを楽しませることも
ヒーローになって悪と戦うことも、
きらきら光る羽根で誰かをうっとりさせることもできず、
ただ一つ持っている能力と言えば
「どんなときでもけっしてウソをつかず、ほんとうのことしかいえない」
というだけなのだ。
しかもこの「能力」、
まるで呪いのように本当にやっかいな力なのだ。
真実しか口にすることができないだけでなく、
どんな場面でも問われれば、
真実を口にせずにはいられないが為に、
いつも周囲とうまくやっていくことができない彼女は、
あるときトロルを怒らせて、
力一杯ほうりなげられてしまう。
妖精は宙を舞い、風にもみくちゃにされながら、
遠くヘルシンキという名の町まで飛ばされて、
そこで枕を抱きしめて泣いていた一人の少女に出会うのだった。
真実しか口にすることができないが為に、
周囲との摩擦が絶えない彼女の孤独と苦労は今度こそ報われるのか!?
彼女の熱烈ファンとしては、
どうか今度こそ幸せになってね!と願わずにはいられなかった。