かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

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わたしを空腹にしないほうがいい

エッセイ集『うたうおばけ』も、小説『氷柱の声』もとてもよかったから、コロナが落ち着いたらぜひ盛岡に遊びに行って、名物に舌鼓をうち、自動販売機でキンキンに冷えた『わたしを空腹にしないほうがいい』を買いたい!と思っていたのだけれど、なかなかその機会には恵まれそうにはない…と、思っていたら、なんと図書館の新着情報ににこの本が!

おおっ!誰か購入リクエストしたのかしら?
地元の作家ならいざしらず、ISBNコードのないリトルプレスを、図書館が購入してくれるなんて、これもやっぱり芥川賞候補にあがった効果なのかしら?
などと下世話なことを思いながらも、いそいそと予約を入れて読んでみた。

読んでみたらこれがまた、予想通りすごくよくて、やっぱりいつか改めて、盛岡にいったら自販機で、この本を買うんだ!と決意を新たにしたりしている。

というわけで『わたしを空腹にしないほうがいい』。
タイトルだけでも、ご飯何杯かいけちゃいそうなこの本には、2016年6月、俳句のウェブマガジン「スピカ」に1ヶ月にわたって連載された記事に加筆修正したものをメインに、その1年後に書き加えられた幾つかの記事と、2つの対談記事も収録されている。

対談以外の記事はすべて、まず日付、つづけてタイトルを兼ねた俳句、その後1~2ページほどのエッセイという構成だ。

めちゃくちゃ料理好きな大学生は、ひとり暮らしを始めるときに大きな冷蔵庫が欲しかったようだが、父親は一人なのにそんなに大きいのはいらないだろうと、一廻り小さいものを買ってくれたのだとか。
数ヶ月後、ひとりでたくさんのおかずを作って食べながらふとさみしくなって、どうだ、と見せつけるつもりで写真を撮って送ると、それを見たお父さんから「誰と暮らしているんだ!!」と怒りの返信が!?

そんな(お父さんにしてみれば笑うどころではなかっただろうが)クスッと笑える話や、日々の暮らしぶりに、思い出に残るあれこれ、ちょっぴり切ないエピソードが、心地よく丁寧な言葉で、食べ物の話を交えながら綴られている。

この本を読むときには絶対、読み終えたらすぐに食べられる美味しいものを用意しておくべき。
さっきご飯を食べたばかりだから大丈夫!なんていうのは通用しない。
その点だけはゆめゆめお忘れなく!!