かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『病むことについて 新装版』

 

 ヴァージニア・ウルフがはじめて小説を世に送り出したのは、33歳の時のこと。
作品は『船出』だった。

そこから遡ること11年。
22歳の時、『ガーディアン』紙にはじめて書評が載って以来、彼女は多くの雑誌や新聞に、書評や伝記的記事、様々な分野にわたるエッセイなどを発表し続けた。

本書にはそんなウルフのエッセイから訳者が選んだ14篇と短編2篇が収録さている。
2002年に「大人の本棚」の1冊として刊行されたものの復刊新装版だ。

インフルエンザにかかったときの心象を描く表題作や、父の思い出を綴った「わが父レズリー・スティーブン」に、「遺贈品」と「雑種犬ジプシー」の2つの短編も興味深いが、とりわけ本好き仲間の皆さんにお勧めしたいのは、書物と読書に関わるエッセイだ。

伝記とはなにか?どうあるべきかを追求する「伝記という芸術」、
ウェイリー版『源氏物語』を評する「『源氏物語』を読んで」、
同時代作家の作品を批評することを妨げる理由はたくさんある。という書き出して始まる「E・M・フォースターの小説」、
あるいは「オーロラ・リー」。
「オーロラ・リー」といえば、あの 『フラッシュ』の飼い主、エリザベス・バレット・ブラウニングの代表作だ。
それについてウルフがあれこれ論じたものが面白くないはずはない。

そして、なんといってもすばらしいのが、「いかに読書すべきか」と「書評について」。
気に入った箇所を書き出そうとすると全文引き写してしまいそうなので、これはもうぜひ、この2つだけでも立ち読みでもなんでもいいから読んでみて欲しい!

本当のことをいえば、内緒にして、幾度となくこっそりと眺めていたいぐらいなのだけれど…ね。