かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

2021年5月の読書

5月の読書メーター
読んだ本の数:26
読んだページ数:5211
ナイス数:705

不可解な失恋に就て不可解な失恋に就て
読了日:05月31日 著者:坂口 安吾
ミカンの味ミカンの味感想
物語はある約束をめぐって揺れる4人の少女たちの中学最後の一年を描き出す。家族構成や経済的な事情、親の娘に期待することなど、家庭の状況は様々で、友だちの気持ちが推し量れないだけでなく、自分自身の気持ちさえよくわからない。そんな少女たちの物語を読んでいるうちに、世界が学校と塾や習い事と家だけで成り立っていて、友だちと教師と家族との関係がすべてだったあの頃の息苦しさが蘇る。チョ・ナムジュという作家は、読み手が思わず(ああ、これは私のことだ)と思ってしまうような、ひりひりとした感覚を呼び起こすのが抜群に上手い。
読了日:05月31日 著者:チョ・ナムジュ
可能性の文学可能性の文学感想
読み終えたばかりの『文豪ストレイドッグス 太宰治と黒の時代』からの派生読書だったのだが…。いやはやこれは!めちゃくちゃ面白かった!そうそうそうなんだよね!志賀直哉!!共感ボタンを連打したい!?織田作、こんなに面白い人だったとは。ちょっと他も読んでみるかな。
読了日:05月30日 著者:織田 作之助
文豪ストレイドッグス 太宰治と黒の時代 (角川ビーンズ文庫)文豪ストレイドッグス 太宰治と黒の時代 (角川ビーンズ文庫)感想
図書館休館中だしと、Kindle沼の底をさらっていたら、随分昔に読友さんに薦められてポチったこの作品が…。さわりだけのつもりで読み始めたのに一気読み。妙なところに実話が盛り込まれていたり、入り組んだ人間関係の中に現実を反転させたものがあったりと、思わずニヤニヤ。あらやだ。面白かったわ。これ、シリーズの他の作品も読んでみるべき??
読了日:05月30日 著者:朝霧 カフカ
矢川澄子ベスト・エッセイ 妹たちへ (ちくま文庫)矢川澄子ベスト・エッセイ 妹たちへ (ちくま文庫)感想
『おばけリンゴ』『あめのひ』『ぞうのババール』メアリ・ド・モーガンポール・ギャリコミヒャエル・エンデ矢川澄子さんには子どもの頃から随分お世話になってきたし、彼女には澁澤龍彦とは切り離して評価されるべき才能があるとずっと思ってきた。70のエッセイを収録したこの本を読んで、改めてその才能に感じ入るとともに、彼女にとって結婚生活は、幼年期の思い出同様、自らの成り立ちに欠かせない経験であったのだろうと改めて思いもした。そういうエッセンスを巧みに盛り込み、さりとて強調しすぎない気配りある編集にも好感が持てた。
読了日:05月29日 著者:矢川 澄子
虔十公園林虔十公園林感想
『文豪たちの怪しい宴』からの派生で○十年ぶりの再読。昔はちっとも解らなかった面白みがあった。
読了日:05月28日 著者:宮沢 賢治
ほんものの魔法使 (創元推理文庫 F キ 3-2)ほんものの魔法使 (創元推理文庫 F キ 3-2)感想
(そもそも“ほんもの”ってなんだろう?)と、今更ながら考えさせられる正統派ファンタジー。なつかしさに後押しされて手に取った本だったが、子どもの頃とはまた違った意味で、たっぷり楽しめた。
読了日:05月26日 著者:ポール・ギャリコ
きみは知らない (韓国文学セレクション)きみは知らない (韓国文学セレクション)感想
11歳の少女ユジの失踪をきっかけに、次第に明かされていく家族皆がそれぞれが抱えている秘密!え?これサスペンスなの!?ひたひたとしのびより次第に広がる不気味な怖さが!?
読了日:05月24日 著者:チョン・イヒョン,鄭梨賢
フラッシュ: ある犬の伝記 (ルリユール叢書)フラッシュ: ある犬の伝記 (ルリユール叢書)感想
Uブックスの出淵訳と読み比べするつもりで手に取ったのだが、この本の魅力は、本篇だけでなく、附録として収録されているウルフの「忠実なる友について」と、エリザベス・バレットの詩「わが忠犬、フラッシュに寄す」、さらにはウルフとバレットそれぞれの年譜に、巻末の「訳者解題」、これらすべて、あますところなく味わえるところにあった。それにしても“彼の美徳を忘れはしない---そもそも犬には、欠点などあまりないのだが”って、ウルフ、めちゃくちゃ犬好きじゃないか!!
読了日:05月22日 著者:ヴァージニア・ウルフ
赤いモレスキンの女 (新潮クレスト・ブックス)赤いモレスキンの女 (新潮クレスト・ブックス)感想
久々にモディアノに会いたくなって、タブッキを本棚から数冊取り出す。映像にしたら鮮やかだろうなと思われるような雰囲気のある作品だった。だがしかし、例えそれが善意からのことであっても、知らない相手が私のバッグに手を突っ込んで、ありとあらゆるものを吟味することを想像すると…。ましてやノートの中身を読み上げられるとなると…。ロマンチック以前に生理的に受け付けられないものがあって、物語に浸れなかった。
読了日:05月22日 著者:アントワーヌ ローラン
虹いろ図書館のひなとゆん (5分シリーズ+)虹いろ図書館のひなとゆん (5分シリーズ+)感想
虹いろ図書館シリーズ第2弾!今回も図書館司書のイヌガミさんはいい役どころ。前作にも登場したスタビンズくんもちょこっと顔を出すので、時間軸としては、同時期のお話のよう。この作品から先に読んでも、問題なく楽しめる。私は面白く読んだが、『長くつ下のピッピ』に通じるものがあるゆんが語る物語が楽しめるかどうかが、評価の分かれ目かも。本の分類の仕方など図書館のしくみやその役目について自然な流れで学ぶことが出来る点もいい。
読了日:05月21日 著者:櫻井とりお
カフェ・シェヘラザード (境界の文学)カフェ・シェヘラザード (境界の文学)感想
休日の朝、まずは一杯の珈琲程度と立ち寄ってみたら、次から次へと語り手が現れて思い出話を繰り返す。故郷の喪失、戦争の後遺症……。物語がどんどん流れ込んできて、カップの中のコーヒーがいつまでたってもなくならず、席を立つことができない。メルボルンのカフェで苦いコーヒーを飲んでいたつもりだったのに、いつの間にか酔わずにはいられなくなり、気がつけば頬が濡れていた。
読了日:05月19日 著者:アーノルド ゼイブル
葉書でドナルド・エヴァンズに (講談社文芸文庫)葉書でドナルド・エヴァンズに (講談社文芸文庫)感想
架空の切手を描きつづけた画家へのオマージュとして、ひとりの詩人が亡き画家に宛てた葉書を束ねた不思議な紀行録を、今度は画家と詩人に魅せられた読者たちが読み解く、そんな不思議な連鎖を思う。
読了日:05月17日 著者:平出 隆
すべてきみに宛てた手紙すべてきみに宛てた手紙感想
再読。
読了日:05月16日 著者:長田 弘
文豪たちの怪しい宴 (創元推理文庫)文豪たちの怪しい宴 (創元推理文庫)感想
読友さんからの紹介でおそるおそる(?)読んでみた。実は初めての鯨作品。なにこれ、結構面白い!?(←失礼!)トンデモ本かと思いきや、え?そうだった?そんなシーン、あったっけ?と、再読の呪いが発動する、意外と「まとも」な文学談義!?(←褒めているつもり!)
読了日:05月14日 著者:鯨 統一郎
文学的散歩 プルウストの小説構成文学的散歩 プルウストの小説構成
読了日:05月14日 著者:堀 辰雄
狂女たちの舞踏会狂女たちの舞踏会感想
ページをめくる毎になにが「狂気」で、どこが「境界線」なのかがどんどんわからなくなっていく。もう少しつきつめて考えたいと思っているうちに、終わってしまう短さがちょっとものたりない気がしないでも。原題は“Le bal des folles”。2019年に発表されたフランスの作家ヴィクトリア・マスのデビュー長篇作で、すでに映像化も決定しているのだそう。おどろいたのは、この作品が「高校生が選ぶルノードー賞」を受賞していること。フランスの高校生、いろんな意味ですごい。
読了日:05月12日 著者:ヴィクトリア・マス
文学のふるさと文学のふるさと感想
安吾のこういうところ、結構好きだ。
読了日:05月12日 著者:坂口 安吾
プルウストの文体についてプルウストの文体について感想
アスパラの季節になったので、「そういえば」と探してきた。その昔読んだ時には、「堀辰雄の文章、いいな」と思っていたのだけれど、多少なりともプルーストを知った今読むと、このにもプルーストに魅せられた人が!と何だか妙に親近感がわいてきた。
読了日:05月11日 著者:堀 辰雄
(きのふプルウストの……)(きのふプルウストの……)
読了日:05月11日 著者:堀 辰雄
肝臓先生肝臓先生感想
「料理飲食店禁止令」に苦笑いしつつ読んでいたら、夜中に伊豆のお魚が恋しくなって困った。北国のそれとは明らかに種類が違うんだよね。コロナ禍でしばらく帰省できていないから、里心、ついたかな。
読了日:05月11日 著者:坂口 安吾
戻ってきた娘戻ってきた娘感想
「13歳のとき、もう一人の母親のことはわたしの記憶になかった。」こんな書き出しで始まる物語は、周囲から「アルミヌータ(戻ってきた娘)」と呼ばれる「わたし」の回想という形で綴られる。子どもの頃は誰だって一度や二度、「自分はこの家の子ではないのでは」とか「もしもあの家の子だったならば…」などと、考えたことがあるのではなかろうか。でももし、それが現実だったならば……。いやもうこれはなかなかの読み応え。続編もぜひ読みたい。
読了日:05月10日 著者:ドナテッラ・ディ・ピエトラントニオ
四月のミ、七月のソ四月のミ、七月のソ感想
李箱文学賞受賞作「散歩する者たちの五つの楽しみ」を含めた11篇の物語を収録したキム・ヨンス(金衍洙)氏のなんとも贅沢で読み応えのある短篇集。恋人のことも、教え子のことも、親のことも、我が子のことも、わかりたくてもわからず、理解しているつもりでも、実は全く解っていない。やっぱり人間は他者を理解することが出来ない生き物なのだろうか。そう思うと少し寂しくなりはするものの、あなたのその気持ちを丸ごと理解することはできなくても、あなたの隣で膝を抱えて同じ時を過ごすことならできるかもしれない。そんな風に思えてもくる。
読了日:05月07日 著者:キム・ヨンス
星の時星の時感想
“泣いたのは初めてだったから、目の中にこんなに水があったなんてしらなかった。”これはそんな彼女の物語。23の言語で翻訳され、世界的な再評価が進む20世紀文学だというこの作品。一筋縄ではいかない、なかなか興味深い本だった。もっとも「ウルフの系譜」ということなら、『世界の文学、文学の世界』に収録されていた同じ著者による短篇「カーニヴァルの残りもの」の方が、ずっとそれらしく、読み手を“意識の流れ”に巻き込んでいくような気もしたのだけれど、これは作品とは別の、出版社の販売戦略の問題なのかもしれない。
読了日:05月05日 著者:クラリッセ・リスペクトル
一度きりの大泉の話一度きりの大泉の話感想
隔たりが絶望的なものであるにもかかわらず、そのことを知らない、あるいはそのことに関心を払わない第三者が「和解」や「対話」を望むことの暴力性を、本書は繰り返し告発する。そしてその第三者の中には、いそいそとこの本に手を伸ばした私自身も含まれているのだ。そのことが痛いほどわかるからこそ胸をえぐられた。半世紀近い時を経てようやく、読者もまた“大泉サロン”や“花の24年組”の伝説から 卒業するときがきたということなのかもしれない。
読了日:05月03日 著者:萩尾望都
かわいいウルフかわいいウルフ感想
同人誌で話題になっていた頃から、気にはなってはいたのだけれど、正直なところどうしても「かわいい」に引っかかりを感じてしまう。そういう偏屈な読者も想定してのことか、そもそも編者のいう「かわいい」とはなにかというところから説明された丁寧な構成には好感が持てた。さすがというか、なんといっても片山亜紀さんが語る『ダロウェイ夫人』がぬきんでてよかった。
読了日:05月01日 著者:小澤 みゆき

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