かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『ミョンヘ』

 

植民地時代の朝鮮を舞台にした韓国のYA小説だときいて、手にした本。

両班家の娘ミョンヘは14歳。
親や親戚からは嫁に行けといわれていたが、東京に留学中で秀才の誉れ高い兄の口添えで、妹のミョンソンと共に「結婚までの少しのあいだ」首都・京城の女学校へ通えることに。

宣教師たちが教鞭をとる女学校の授業は、ほとんどが英語で行われていたが、ミョンヘは向学心に燃え、優秀な成績を収める。
結婚なんかせずに、夜学の教師になって、故郷で子どもたちを教えたいという同級生ナッキョンに刺激をうけ、教師のすすめで医療宣教師が治療に当たる夫人病院で通訳ボランティアに通うようになり、女性ながら米国留学も果たし医師の仕事を通じて日々貧しい人を助けるシン医師と出会って、親の決めた結婚以外の、自分自身が進みたい自分の将来について考えるようになっていく。

だが、女学校進学を後押ししてくれた兄でさえも、ミョンヘのそんな考えを頭から否定し、女学校を出たら親の決めた結婚して、子どもを産み家庭を守るべきだと諭す。

自由と独立をもとめて民族独立運動の先頭に立たんとする兄も、国を憂い行動を起こすのは男の仕事だと信じて疑わないのだった。

そしてついに運命の日、1919年3月1日がやってくる。
京城のパゴダ公園には数千人の学生や民衆が集まり、口々に「朝鮮独立万歳! 」をさけび始めて…。


家を離れて進学したことで新しい価値観に触れた少女の成長を描いたYA小説だ。
祖国の困難な時代を描いた歴史小説でもあり、女であるが故に直面する様々な悩みや苦しみを描いたフェミニズム小説でもある。
様々な問題に真摯に立ち向かうこの作品、第11回チャンビ「すぐれた子どもの本」創作部門大賞受賞作ときいて納得した。