かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『無垢なる聖人』

 

原題は“Los Santos Inocentes”
1981年に20世紀のスペインを代表する作家の一人ミゲル・デリーベス(1920-2010)によって書かれたこの物語は、1984年にマリオ・カムス監督によって映画化され、出演した二人の俳優がカンヌ映画祭の優秀男優賞を受賞している。


舞台は1960年代後半のスペイン南部。

還暦をすぎて暇を出されたアサリアスは、妹レグラの家族の元に身を寄せる。
レグラの夫ちび・パコは、持ち前の鋭い嗅覚で、大農園主の子息イバン若様の狩りのお供を務めている。
レグラとちび・パコは子どもたちに教育を受けさせたいと思っているが、なかなかうまくいかない。
娘の一人ニエベスは、自分も聖体拝領をしたいと夢見ているが、若様たちはそんな娘の願いを一蹴して笑い飛ばす。

元々知的障害をもっているらしいアサリアスは、どうやら認知症も進んできているようで、ところ構わず排便するなど、その身を清潔に保つことが全く出来ずに、レグラたちを悩ませるが、雛から育てたミヤマカラスの“とんびちゃん”と心を通わせ、重度の障害をもつレグラとちび・パコの娘ニニャチーカの世話を焼く。

ある日、若様の狩りのお供をしていたちび・パコが、足の怪我をする。
大会が迫っているため、あせった若様は、安静を要するちび・パコに無理をさせ、またもや大怪我をさせてしまう。

仕方なくちび・パコの起用を諦めた若様は、ミヤマカラスを飼い慣らすアザリアスに目をつけて、狩りに連れて行くことにするのだった。

ところが狩りの成果は散々で、怒り狂った若様は………。

貧困にあえぐ貧しい人たちと、遊んで暮らす金持ちがいて、心優しい人たちと、わがまま放題の人たちがいる。

それでも、誰一人幸せになることのない残酷なラストは、新しい時代の幕開けを予感させる。