かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『星を見あげたふたりの夏』

 

 

野菜や果物に食べ頃があるように
本にも美味しい読み頃があると思わない?
もっとも食べものと違って本の場合は
真夏に冬の本を読むのもありだし
「季節限定」というわけではないけれど。

そしてまた児童文学を大人が読むのも
大人向けに書かれた小説を背伸びして子どもが読むのもありで
読み手によって旬の時期が違うから
「今が読み頃!」と見定めるのが少々難しくはあるのだけれど。

この本は12歳の少女たちが経験するひと夏のあれこれを描いた作品だ。
「ブルーベリーを摘む話」だと聞いたので
北国はもうすっかり秋の気配ではあるのだけれど
ここのところ毎朝、庭のブルーベリー摘みに精を出している私には
「いまが読み頃」だと思って積まずに読むことにした。

読んでみたらこれがまた、びっくりするほど「旬」だった。

まず主人公の名前がタイガーリリー。
オニユリちゃんだ。
彼女は亡くなったお母さんがつけたこの名前がキライで
周囲には「リリー」とだけ呼ばせているのだけれど
その気持ちわからないでもない……
と我が家の庭に抜いても抜いても毎年生えてくる
存在感たっぷりのオニユリをみて苦笑いする。

オニユリ

そのリリーが愛犬のラッキーを通して知り合ったサルマはブルーベリー畑で働いている。
サルマたち一家はブルーベリー摘みにやってきた季節労働者なのだ。
低木のブルーベリーの収穫は腰に負担がかかってかなりしんどいものだけれど
あちこちから労働者が集まってくるような大規模農園でも
レーキをつかった手仕事だという。
家の庭のブルーベリーとサルマたちが摘むワイルドブルーベリーでは
種類が違ったりするのかしらと
ワイルドブルーベリーををググってみて、そのワイルドぶりにおどろく。

リリーの住む町はブルーベリーが特産で
生産高を誇るだけでなく、様々な加工品もつくられているし、
毎年クイーンを決めるブルーベリーフェスティバルも開催されているという。

私はいつも収穫したブルーベリーのほとんどをジャムにしてしまうのだけれど、
この本に出てくるブルーベリーパイやブルーベリートルティーヤもおいしそう!
とブルーベリーを摘みながらお腹が減って、夢が膨らむ。

そうそうブルーベリーには一粒一粒星がついているって
なんのことだかわかる?

ブルーベリー

これこれ、この「がく」のことだよね?

祖父母と共に暮らす少女リリーが、
家族とともに出稼ぎにやってきた少女サルマと出会い
友情をはぐくんでいく物語は、
社会の抱える様々な矛盾への問題提起をさりげなく織り込みつつ
少女たちがお互いの足りないところを補い合いあいながら
勇気を出して一歩踏み出すことの大切さを描く
甘みも酸味もちょうどいい
後味のよいさわやかな物語でもある。

物語の主役たちやその親の世代より、
祖父母の年齢に近い私だが、
ブルーベリーがつないでくれた縁で
すっかりお仲間気分になって旬の味わいを堪能した。

              (2018年09月05日 本が好き!投稿