かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『ブエノス・ディアス、ニッポン―外国人が生きる「もうひとつのニッポン」』

 

出版社の若手社員達が企画したという選書フェア
「今、この国を考える−−『嫌』でもなく『呆』でもなく」。
店頭や新聞・ネット報道で目にされた方もおられるだろうか?
本書はそのフェアで紹介されていた本のうちの1冊だ。

実際に外国人の在留問題等に積極的にかかわる弁護士が、
自分の手がけてきた事件を紹介しながらラテン系の明るいノリ(?)で
わかりやすく語るのは
コロンビアから売られてきた自分の誕生日も知らない10代の少女
健康保険を持たずに重い病に冒された日本で育った台湾国籍の青年
自動車事故にあって重傷を負ったスリランカ人の少年
日本人の父とフィリピン人の母に望まれて産まれてきたにもかかわらず
無国籍になってしまった子ども
手続きをし真面目に働いていたにもかかわらず、
9.11の余波で謂われのない罪に問われ拘束されたエジプト人男性
等々、この日本で、本当にそんなことが起こっているのかと
思わず衝撃を受けてしまう数々。

国籍や人種にかかわらずあるはずの人権が
ないがしろにされている現状に
自分の国のことはよく知っているつもりだったのに、
まだまだ知らない側面が沢山あるということも実感したし、
今、世間で議論されている外国人労働者受け入れ問題を考える上でも、
是非とも知っておかなければならないあれこれが詰まっている気もした。

初版が2005年、それ以前に月刊誌に連載されていたものなので
法律や判例など少し古くなっている部分はあるのかもしれないが、
そういったことがあまり気にならないほど胸にズシンとくるものがあり、
そして残念なことにおそらくは、
そう変わっていないであろう私たちの人権感覚故に
今もって充分通用する中味となっているとおもう。

 

               (2014年07月10日 本が好き!投稿