かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『すべての、白いものたちの』

 

白いものについて書こうと決めた。

そんな言葉で始まるこの本には、本当に白いものが詰まっている。


時折、本から顔を上げ、私も白いものを探してみる。
部屋の壁紙、レースのカーテン、空に浮かぶ雲、庭に積もった雪。
この本に使われている様々な風合い異なる、
けれどもやっぱり「白」としか言いようのない紙の
質感を指の腹で確かめながら、
こんなにいろいろな「白」があることに胸を打たれる。


時折、声に出して読んでみる。
あまり感傷的になりすぎないように、
抑揚をつけずに淡々と読み上げたつもりなのに
なにかがこみ上げてきて、視界がにじむ。

特に印象的なセンテンスをノートに書き写してみもした。
それでも、この本の魅力について
あれこれと語ることが、私にはできそうにない。

遠い昔、海岸で拾った小石を引き出しから取り出して手のひらにのせる。
沈黙をぎゅっと固めて凝縮させることができたなら、
こんな手ざわりだろうと思えた。

「白い石」という項から拾い上げた言葉が
私の心を波立たせる。

時々、本棚から引っ張り出しては、私は思い出すにちがいない。
心の中に浮かんでくるなにもかもすべてをぎゅっと
凝縮させたような本だったことを。

           (2019年03月06日 本が好き!投稿