かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『月曜日は土曜日に始まる―若い科学者のための物語』

 

プログラマーであるぼく(ブリワーロフ)は休暇中だった。
レンタカーを借りて友人と落ち合うためレニングラードから地方都市へ向う途中、ヒッチハイクをする二人の男を拾ったのは、まったくの偶然だった(はず)。
二人の紹介で泊まることになったのは、ちょっと変わった博物館。
疲れたぼくはソファーに横たわりぐっすり眠り込むはずが……不審な侵入者やら弦楽器をつま弾きながら歌う猫やらしゃべる鏡に遭遇するはめに?!
あれよあれよという間に、ちょっと変わった連中のペースに巻き込まれ、いつの間にやらプログラマーを探しているという彼らの手伝いをすることに?!
【第1話「ソファーをめぐるてんやわんや」】


そんなわけでぼくが働くことになったのは、「ソ連邦科学アカデミー MYKK」。
なんの略かって?それはつまり「魔法妖術科学研究所」だ。
プログラマーのぼくが働いているのは電算室だが、ここに持ち込まれる依頼ときたら!
研究所には線形幸福部に生命の意味部、防護魔術部や予報・予言部、絶対認識部など、昼夜を問わず、あやしげな実験を繰り返す部署があり、そこで働く“人”たちは、ソロモン王の時代からその名を轟かせていたという大魔法使いやら、生前の功績が認められて死後も研究を続けることを許可されている幽霊やら、ジンやら吸血鬼やらで?!
晦日の当直をいいつかったぼくは、その夜は誰も働かせてはいけないときつく言われていたのだけれど…………。
【第2話「うたかたの夢」】


ある日1羽のオウムが死んでいた。
翌日オウムは瀕死の状態だった。
そして翌々日、オウムは元気に話をしていた!!
えっ……?!
【第3話「てんてこまい」】


1960年代半ばにソ連で書かれた物語は、SFとファンタジーが入り交じり、あちこちで小難しい“理論”が展開されるユーモア小説。
少々理屈っぽい出だしから、主人公による「あとがきと註釈」に至るまでとことん面白く、すっかり夢中になってしまった。


作者のA&B・ストルガツキイは、アルカージイ・ストルガツキイとボリス・ストルガツキイという兄弟コンビ。
タルコフスキー監督の映画『ストーカー』の原作者としてご存じの方もいるかもしれない。(…などと知ったかぶりをして書いてはみたものの、実のところ私はこの映画、観たことがない。)
兄のアルカージイは英語と日本語の通訳者を経た後日本文学研究者として、弟のボリスは天文学者兼コンピューター技師としても働いていたのだとか。

この作品にもところどころに風刺がちりばめられているが、後年発表した続編は体制批判とみなされて時の政府によって発禁処分を受けるなど、長い不遇の時代があったらしい。
物語の“続き”も気になるが、この作風で体制批判?いったいどんな??と興味は尽きない。

積読本をようやく1冊減らしたつもりが、この物語の続編も含め新たに彼らの作品を積み上げてしまうことになりそうだ。

           (2016年02月23日 本が好き!投稿