かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『深夜プラス1』

 

例によって例のごとく津村記久子さんの 『やりなおし世界文学』からの派生読書。
といっても『やりなおし…』を読み終えた時点では、この作品、読みたい本のリストの中ではかなり後ろの方に位置していた。

ところが、 #やりなおし世界文学 読書会にご参加頂いている方々によれば、この作品、傑作だというだけでなく、あのルパン三世にも影響を与えた作品なのだとか。

冒険アクションか~、ハードボイルドか~ついて行けるかなあ…と及び腰ながら、読んでみることに。

どうせなら新訳でと、図書館にリクエストしたのだが、なぜか廻ってきたのは年季の入った旧訳だった。
ちなみにカーリルで調べてみたところ、新訳の方は大学図書館を含め北海道内の図書館4館にしかに所蔵されていなかった!
既に旧訳版があるからということもあるかもしれないが、いろんな意味で「古さ」がネックになっているのかも?と、この辺りもちょっと気になるところではある。

そんなこんなで、今回、私が通しで読んだのはハヤカワ・ミステリ文庫(1976年4月30日発行/1996年10月15日30刷)。
書誌情報と書影は異なるが同じ菊池光さんの翻訳だ。

語り手兼主人公のルイス・ケインには、第二次世界大戦中、イギリス人ながらフランスでレジスタンス活動をしていたという過去がある。
そんな彼がパリで久々に再会したかつての仲間弁護士のメルランから、マガンハルトという富豪実業家を密航してくるフランス沿岸部で拾ってリヒテンシュタインまで送り届ける、という仕事を依頼される。

マガンハルトは何者かに付け狙われているが、婦女暴行犯の濡れ衣を着せられていてフランス警察から手配中の身であるため、警察に助けを求めるわけにはいかないのだという。

ケインは護衛のために凄腕のスナイパーを同行させることを条件に引き受けることにするのだが、メルランはかつてレジスタンス仲間だったヨーロッパ凄腕ランキングNo.1とNo.2のスナイパー2人とは接触できないからと、No.3の元シークレット・サービスのアメリカ人ハーヴェイ・ロヴェルを手配する。

ところが使うはずの車には死体が転がっているし、どうやらハーヴェイはアル中らしいし…で、前途多難もいいところ。

それでもケインはかつての仲間たちの助けを借りながら、任務をやり遂げようとするのだが…。

時代的な制約があるとはいえ、婦女暴行などというのは人をおとしいれるのに一番都合がよく、でっち上げ放題だなんていうくだりには閉口もするが、そこには目をつぶっても死体の数が多すぎる。
いくら何でも殺しすぎだろう……と思いつつも、スリリングな展開と絶妙な脇役陣にぐいぐい引っ張られて一気読み。

なんだか妙に悔しいけれど、確かに面白かった。

読み終えて振り返ってみればそこここに伏線が!と感心しつつも、戦争が終わっても暴力や命がけの冒険から上手く距離を置くことが出来ずにいる男たちの悲哀を思わずにはいられなかった。