かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

2021-01-01から1年間の記事一覧

2021年9月の読書

9月の読書メーター読んだ本の数:14読んだページ数:3849ナイス数:486ムーミン全集[新版]6 ムーミン谷の仲間たち (ムーミン全集 新版 6)の感想旧版と読み比べてみると、新版のよさがきわだった。これからそろえるならこの版がお薦め。私ももう少し読み比べ…

『ムーミン全集[新版]6 ムーミン谷の仲間たち (ムーミン全集 新版 6)』

ムーミン全集[新版]6 ムーミン谷の仲間たち (ムーミン全集 新版 6) 作者:トーベ・ヤンソン 講談社 Amazon 1964年に山室静さんの翻訳による日本語版『ムーミン谷の冬』が講談社から出版されて以来ずっと多くの読者を魅了してきたムーミン一家の物語。私も…

『存在の瞬間―回想記』

存在の瞬間―回想記 作者:ヴァージニア・ウルフ みすず書房 Amazon 著者の死後、研究者によって編まれたヴァージニア・ウルフの自伝的著作集。サセックス大学所蔵のウルフ文書の中から選び出された5篇が収録されている。これらの原稿は、幾度となく推敲を繰…

『お話きかせてクリストフ』

お話きかせてクリストフ (文研ブックランド) 作者:ニキ コーンウェル 文研出版 Amazon 中央アフリカのルワンダから両親とともにイギリスにやってきたクリストフは転校先の学校になかなかなじめそうになかった。英語は話せるが、学校に行くこと自体も二年ぶり…

『行く、行った、行ってしまった』

行く、行った、行ってしまった (エクス・リブリス) 作者:ジェニー・エルペンベック 白水社 Amazon 原題は“Gehen, ging, gegangen.”行く、行った、行ってしまった、ドイツ語不規則動詞の活用だ。未来はこれからまだ何年も続くかもしれないし、ほんの数年しか…

『最後のオオカミ』

最後のオオカミ (文研ブックランド) 作者:モーパーゴ,マイケル 文研出版 Amazon インフルエンザをこじらせて肺炎になったマイケル・マクロードは、かかりつけの医者でもある親友から、この病気は厄介だから大人しく寝ているようにときつく言い渡され、何週間…

『予期せぬ瞬間』

予期せぬ瞬間 作者:アトゥール・ガワンデ みすず書房 Amazon 原題は“Complications: A Surgeon’s Notes on an Imperfect Science”著者のアトゥール・ガワンデはアメリカの外科医であり、公衆衛生研究者であり、「ニューヨーカー」のライターでもあって、何冊…

『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ』

清少納言を求めて、フィンランドから京都へ 作者:ミア・カンキマキ 草思社 Amazon 心ときめきするもの庭にやってくる小鳥たち散歩の途中で出会うリス青空に映える山並みいつまでも読み終えたくないような面白い本実際に傍らにいたなら難がありすぎるようであ…

『やさしい猫』

やさしい猫 (単行本) 作者:中島 京子 中央公論新社 Amazon 入管問題を扱った小説だと聞いて手に取ってはみたが、正直さほど期待はしていなかった。なぜってこの問題は名古屋出入国在留管理局に収容中だったスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんが死亡…

『ふるさとって呼んでもいいですか: 6歳で「移民」になった私の物語』

ふるさとって呼んでもいいですか: 6歳で「移民」になった私の物語 作者:ナディ 大月書店 Amazon きっかけはTwitterで紹介されていた大月書店の記事(外部リンク)だった。 6歳のときに家族とともにイランから日本にやってきた少女が高校三年生(19歳)の…

『ブエノス・ディアス、ニッポン―外国人が生きる「もうひとつのニッポン」』

ブエノス・ディアス、ニッポン―外国人が生きる「もうひとつのニッポン」 作者:ななころび やおき ラティーナ Amazon 出版社の若手社員達が企画したという選書フェア「今、この国を考える−−『嫌』でもなく『呆』でもなく」。店頭や新聞・ネット報道で目にされ…

『フレデリック・ショパン──その情熱と悲哀』

フレデリック・ショパン──その情熱と悲哀 作者:フランツ・リスト 彩流社 Amazon 新刊情報を知ったとき、あのショパンの生涯を、あのリストが書き残す!そんな本があるの!?と、一瞬、耳も目も疑った。だがしかし私が知らなかっただけで、どうやらこれ、世界…

『立ちどまらない少女たち: 〈少女マンガ〉的想像力のゆくえ』

立ちどまらない少女たち: 〈少女マンガ〉的想像力のゆくえ 作者:大串尚代 松柏社 Amazon “<少女漫画>的想像力のゆくえ”という副題と帯にある「少女文化」と「外国文学」の文字に惹かれて手をのばした本はアメリカ女性文学を専門とする慶應義塾大学文学部教…

『私がもらった文学賞』

私のもらった文学賞 作者:トーマス・ベルンハルト みすず書房 Amazon トーマス・ベルンハルト(Thomas Bernhard、1931年2月9日~1989年2月12日)は、現代オーストリアを代表する作家の1人だ。だがその作品にはしばしば自国への辛辣な批評があら…

『すべてきみに宛てた手紙』

すべてきみに宛てた手紙 作者:長田 弘 晶文社 Amazon 引き出しの奥から、昔使っていたノートが出てきた。読書記録といえるほどきちんと整理されたものではなく、気に入った言葉とか、気になる関連書籍の題名とか、そんなものを片っ端から走り書きしたそのノ…

『ヤーガの走る家』

ヤーガの走る家 作者:ソフィー・アンダーソン 小学館 Amazon わたしの家には、鳥の足がはえている。 家は、年に二、三度、夜中にすっくと立ち上がり、猛スピードで走り出す。百キロ走るときもあれば、千キロのときもある。そして似たような場所にばかり、す…

2021年8月の読書

8月の読書メーター読んだ本の数:20読んだページ数:4717ナイス数:670映画ノベライズ ハニーレモンソーダ (集英社オレンジ文庫)の感想#ナツイチ 長篇漫画が原作の映画版ノベライズなので、おそらくいろいろすっ飛ばしそぎ落としているのだろう、あらすじに…

『赤い魚の夫婦』

赤い魚の夫婦 作者:グアダルーペ・ネッテル 現代書館 Amazon 著者のグアダルーペ・ネッテル(Guadalupe Nettel)は、1973年メキシコシティ生まれの、現代メキシコを代表する女性作家。国際的にも高い評価を受けている作家の作品を初めて日本に紹介する短…

『後宮の検屍女官』

後宮の検屍女官 (角川文庫) 作者:小野はるか KADOKAWA Amazon 第6回角川文庫キャラクター小説大賞とをダブル受賞した“中華風後宮”ミステリー。発売後、一週間もしないうちに重版決定!と聞いて、こういうのって“何匹目のドジョウ”なのかしら?と思いつつ読ん…

『ハムレットの母親』

ハムレットの母親 作者:キャロリン・G. ハイルブラン みすず書房 Amazon キャロリン・G・ ハイルブランは、1926年生まれ。コロンビア大学で博士号を取得し、同大学で長く教鞭を執り、1992年に引退、名誉教授となった。専攻は近代イギリス文学、フェ…

『屍の街』

屍の街: 大田洋子 原爆作品集 作者:大田洋子 小鳥遊書房 Amazon もう随分前のことではあるが「屍の街」は読んだことがあったので、私は大田洋子を「原爆文学作家」として記憶してはいた。だが、それ以外の作品は読んだことがなく、作家自身についても、広島で…

『作家の秘められた人生』

作家の秘められた人生 (集英社文庫) 作者:ギヨーム・ミュッソ 集英社 Amazon 1964年、アメリカ人の父とフランス人の母との間にニューヨークで生まれたネイサン・フォウルズは、パリ近郊で幼年期を過ごしたあと、アメリカで学び、イエール大学で法学と政…

『骸骨』

骸骨:ジェローム・K・ジェローム幻想奇譚 作者:ジェローム・K・ジェローム 国書刊行会 Amazon この装丁だし、てっきりおどろおどろしく怖い話が沢山詰まっているに違いないと思い込んでいて、(寝る前には読めそうにないけれど、さていつ読もうか?)などと…

『殺人ゲーム』

殺人ゲーム (角川文庫) 作者:レイチェル・アボット,関 麻衣子 KADOKAWA Amazon 夫マットの学生時代の友人の結婚式に夫婦そろって招待されたジェマはその友人ルーカスが大富豪で、式の会場が海沿いにあるお城のような屋敷だと知ってはじめて顔を合わせる面々…

『氷柱の声』

氷柱の声 作者:くどうれいん 講談社 Amazon 白い絵の具の上にさらに白を重ねながら息を、す、と止めて筆を走らせる。二〇一一年、二月のおわりのことだった。こんな書き出しで始まる物語の主人公兼語り手の伊智花は、東日本大震災のあったその年、盛岡の高校…

『曲亭の家』

曲亭の家 作者:西條奈加 角川春樹事務所 Amazon お路には、初めて顔を合わせた見合いの席から既に嫌な予感があったのだ。とはいえ、結婚は両家の親が決めるものであったし、なによりも彼女自身が「天下に名高い曲亭馬琴の家に嫁ぐ……」その誘惑に抗えなかった…

『家宝』

『家宝』 “ルビーには、中にインクルージョンがある。インクルージョンというのは異物のことで、宝石が不純なことを意味する。それは小さな管であったり、気泡であったり、ルチルのように別の鉱物の破片ということもある。ルビーの場合、それは品質の低下を…

『病むことについて 新装版』

病むことについて 新装版 作者:ヴァージニア・ウルフ みすず書房 Amazon ヴァージニア・ウルフがはじめて小説を世に送り出したのは、33歳の時のこと。作品は『船出』だった。そこから遡ること11年。22歳の時、『ガーディアン』紙にはじめて書評が載っ…

『ホワイト・フラジリティ 私たちはなぜレイシズムに向き合えないのか?』

ホワイト・フラジリティ 私たちはなぜレイシズムに向き合えないのか? 作者:ロビン・ディアンジェロ 明石書店 Amazon たとえば「それ偏見だよ」「ずいぶん差別的だね」と、誰かに指摘されたとしよう。おそらく私は躍起になって「そんなことはない」「それは誤…

『世界と僕のあいだに』

世界と僕のあいだに 作者:タナハシ・コーツ 慶應義塾大学出版会 Amazon 品のある装丁で詩的なタイトルの比較的薄い本だ。若い父親が14歳の息子に語りかけるという体裁をとりながら現代のアメリカ社会にあってアフリカン・アメリカンの男性がどのような境遇…